ウィーンフィルを聴く贅沢! 楠原祥子
ウィーンフィルハーモニーオーケストラを聴きに行きました。この贅沢!心が静かな感動で満たされる数
少ないコンサートでした。
ウィーンフィルをライブで聴いたのはずいぶん久々のこと、20年くらい前、ウィーンの楽友協会ホール(ムジークフェライン)で聴いて以来かもしれません。
指揮はクリストフ・エッシェンバッハ。これまた、ピアニストとして最後に聴いたのはやらいったいいつのことだったか。
モーツァルトのP協奏曲23番イ長調と、チャイコフスキーの弦楽セレナーデ!という人気曲のカップリングを加藤優佳ママが発見し、ご一緒することになりました。
モーツァルトのP協奏曲。うっとりするようなやさしい響きのすべり出し。音の明るさで前進するモーツァルトではない。ムゥーっと重いものを動かす時のように、音の充実が後から実っていく。
アタックがまったくと言っていいほどつかないオケの音の滑らかさ。エッシェンバッハのピアノも、オケの音をそのまま模写したように、同じ色調でとけ込み、まるで室内楽を聴いているようです。
。。。。それにしてもなんとも独特な響き。
耳が釘づいてしまいました。高音がいくらか心もとないと感じるほど中音域に厚みがあるのです。バランスがいわゆるモーツァルトの音楽像と全然違う。この響きはなんだろう?これがウィーンフィルの独自の響きなのだろうか。。。。?と考えているうちに、景色がいつもと違うことに気がつきました。
。。。。オーケストラの並びが美しい!
いわゆる、『古典配置』になっていることに遅ればせながら気がついたのです。
第一ヴァイオリンと第二ヴァイオリンが、客席側に両翼に並んでいるので、なるほど見た目に美しい並びです。チェロとヴィオラは内側に。こちらから見ると左から、第1ヴァイオリン、チェロ、後ろにコントラバス、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという配置です。
。。。。通常とまったく違う響きがする!
まず内声に厚みが出て、各パートが独立してそれはよく聴こえてきます。普通隠れてしまうヴィオラやチェロの刻みもくっきり聴こえる。
ヴァイオリンが二手に完全に分かれるので、第二ヴァイオリンのやっていることが、第一ヴァイオリンよりいくらかやさしい音ではっきり聞き取れる。
そういえば、8月にワルシャワで聴いた、プレトニョフ指揮ロシアナショナル交響楽団もこの配置でした。
そして、誰もが一度聴いたら忘れられなくなる曲・・・チャイコフスキーの弦楽セレナーデ。
エッシェンバッハは過度なノスタルジーを音に忍ばせず、冒頭のくさびを打ち込むような旋律を、一歩引いて聴かせ、全体像として牧歌的な響きから高貴な音楽に昇格させているように思えます。。
第2楽章のワルツ。あぁ、これぞウィーンフィル!!シンプルなのになんとも優雅。ルバートもなく極めて古典的に拍を進めているのに、これがワルツの粋!と、ため息が出ました。
ウィーンフィルの響きは、プロコフィエフの古典交響曲ですら頭にアタックをつけない。手っ取り早く頭を合わせれば、きっと楽に身体が拍に乗っかるだろうに、でもそれをやらない。
ウィーンフィルがそうなのか、エッシェンバッハがそう求めるのか。後から響きの充実が追いついていくので、私はどうしてもそれを必死に追い求めてしまうのです。
4日(日)に稲生亜沙紀さんが公開リハーサルを聴きにいった時の話を聞きました。亜沙紀さんの許しを得てここに載せます。
彼女によれば。。。。
「サントリーホールにてウィーンフィルの公開リハーサルを聞きに行ったのですが、小澤征爾先生が客席に聴きにいらっしゃっていて、オケからのお誕生日お祝いのサプライズ(9月が誕生日だったようです)の演奏がありました。急にエッシェンバッハから小澤先生タクトに変わり、ベートーベンエグモント序曲の演奏を聴くことができました。
語彙が幼稚ですが、魔法のような時間で、オケも小澤先生も、純粋な音楽へ捧げる心のようなものを体感し感動で泣いてしまいました。背筋が正される思いです。」
プログラム
指揮/ピアノ:クリストフ・エッシェンバッハ。Christoph Eschenbach
モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番 イ長調K488 Mozart: Concerto for Piano and Orchestra No.23
チャイコフスキー:弦楽のためのセレナーデ Op.48 Serenade for String Orchestra
プロコフィエフ:古典交響曲 Op.25 Symphony No.1 “Classical”
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