ショパンの魅力!千葉市文化センターアートホール
8月31日(水)千葉市文化振興財団の主催『ショパンの魅力!楠原祥子レクチャーコンサート』!ご来場の皆様、誠にありがとうございます。
スタッフのみなさまの大変にきめ細かい対応を頂いて、おかげさまで無事に終了しました。かなり大量にアンケートが返ってきたそうで、間もなく内容をまとめてお送り下さるそうです。💓ドキドキ
今回は、私が桐朋学園大学で行っているショパン作品を主軸にした講義の内容をベースにして、専門性の高い事項は取り除き、一般の多くの方々にお楽しみ頂けるように組み立てました。
でもあまり野に下り過ぎず、表面的なショパン像ではなくて、美しい旋律の襞に隠されたショパンの真価、その音楽的着想の源泉、民族性などに言及しました。
5つのセクションを設定、ノクターン・ワルツ・ポロネーズ・マズルカ・バラード、そして、それぞれのジャンルは先に演奏をして、それからレクチャーという進行にしました。
一つのジャンルの解説をしてから、では演奏!・・・という流れのケースが多いように思いますが、これは私はやりにくいです。
なぜかと言えば、演奏をそのレクチャーで話したことに当てはめるように自分を仕向けることになるからです。羽をもぎ取られた鳥になるようなもの。
さてステージに登場。まずはコントルダンス変ト長調を演奏。ショパンのコントルダンス??なにそれ?聞いたことない。。。
でしょうね。英語のカントリーダンスという意味です。といっても農民たちのダンスではなく、市民階級でとても流行し、上流階級でも踊られるようになったお遊びダンス。ショパンのコントルダンスもちょっと素敵です。この曲で皆様を音楽の世界にお誘いします。
そしてここからは本格的に始まります。
まずはノクターンです。演奏したのは、ノクターンでは、いえ、それどころかショパンの作品でもっとも有名なノクターン第2番作品9-2です。
これまでこの曲に真正面から取り組みステージで弾いたことはなかったですが、今回取り組んでみて、耳ざわりが良い旋律を生かすための音響、装飾、ペダリングなどを色々試し、楽譜をよく見極めることができてよかったです。
『夜に想う ロマン主義の象徴 ノクターン』
次はワルツに話を移します。
『自由と解放!19世紀の快楽 ワルツ』と題しました!
まず演奏したのは、これはもう『華麗なる大円舞曲第1番Op.18』。第2番Op.34-1にしようかとも思いましたが、というのは、2番でも同等の長さと華やかさと格があるのでそれでも良いのですが、形式が1番とは違うのです。
私は第1番はものすごくポピュラーですけど、とても好き!あの軽やかさと、ウィーン風ワルツの形式を受け継ぐ、どんどん楽想が変わっていく楽しさ、全曲を通して繰り返す連打もスリリングで、これはいつでも弾けるようにしています。
20歳で祖国を後にし、ウィーンで不遇の半年間を送ったショパンは、さんざんシュトラウスやランナーのワルツをけなしたものの、ふと気がついてみれば、生涯に渡って20曲ものワルツを作曲したのでした。
数多くのピアノ曲のワルツがあるけれど、ショパンのワルツは華やかさ、芸術性の面でも抜きん出ています。
何より人の心をパッと明るくするのがワルツ。自由と解放の精神を持つのもワルツ。誰もがワルツを踊り狂った19世紀。Queen of the dance!!
前打音でこれでもかと飾られている華麗なる大円舞曲の1節を映し出しながら、装飾とは?を解説。C.P.E.バッハのクラヴィア奏法にある、「装飾は音に命を与える!」も引用。
そして。。。
この先は故郷に創作の源泉を持つ3つのジャンルです。
まずポロネーズです。『民族の精神性の反映 ポロネーズ』
演奏したのは珍しく『軍隊ポロネーズOp.40-1』。パワフルです。
私のポーランドの師、バルバラ・ヘッセ・ブコフスカはこの軍隊ポロネーズがとても上手でした。威厳ある誇り高さを感じさせるリズムや轟くティンパニーの音など本当に素晴らしかった。すごい高揚感がありました。
だから私たち生徒はものすごく良いポロネーズのお手本を知っているわけで、それをどうにか自分のものにしたいと思ってきました。
本当はこの軍隊Op.40-1とペアになっているOp.40-2も一緒に弾くと良いのですけど。進軍!の勢いを持つ『軍隊』と、悲哀の色合いを持つ『ハ短調』と。ショパンの2面性そのものが表現されています。
この夏、ポーランドのドゥシニキのショパン音楽祭でダン・タイソンが演奏したこのOp.40-2ハ短調の録画で見て、ここまで深い挫折と悲しみを表現できるとは。。。と尊敬の念を新たにしました。
続いて、ポロネーズと対照をなすとも言えるマズルカに移ります。
『故郷の歌を綴った日記 マズルカ』と題しました。
演奏したのは『4つのマズルカ 作品30』。これは実は困っていることがあって、この作品30のマズルカが好きでたまらなくて、4曲全てが私の感覚にピタリと当てはまるのです。だからこればかり弾くようになってしまい、作品17、24、33などの中期のマズルカもどれも作品として素晴らしいし、どれもそれなり好きですが、どうもこの作品30に気持ちが向いてしまうのです。
今度のステップのトークコンサートもこれを選んでしまっているし。。。
思い切って少し離れるように努力しようと思います!
女性的に表現されるマズルカ。人間の感情の機微の表現。
「農民たちの直情的な情熱と、涙と汗にまみれた人間の営みにある、どんな僅かな心の動きもショパンは見逃さなかった。光をあて影を落とし、和声で色合いに変化をつけて表現した。」
この一文は桐朋でも学生によく話します。農民の歌がマズルカから聞こえてくると憂愁の念にかられます。
その源泉はポーランドの田舎にあり農民たちの声にあります。
この写真はショパンが14歳、15歳の夏休みを過ごしたシャファルニアの風景です。コロナ禍に入る前、私がショパンの心に近づきたくて行った時に撮影した写真。電線こそ通っていますが、ショパンが過ごした頃とさして変わらぬであろう風景が広がっていました。
ショパンにとってはこの地での体験が農村の生きた音楽との接点で、マズルカの原点と言えます。
そして・・・バラードです。弾いたのは『バラード第3番Op.47』
『伝説や民間伝承にある幻想や怪奇 叙事詩を音で語る バラード』
ゲーテの『魔王』、多くの作家や作曲家が素材として用いたオンディーヌ(水の精)伝説、そういった文学の世界での叙事詩バラードが隆盛を極めるようになり、まだピアノ曲では誰も作曲したことのなかったバラードを、ショパンが音で仕立てたのです。
最後はロマン派の中にあって、ショパンの最も深い理解者の一人、それがリストで、共にパリで数年の時を過ごし、ショパンのエチュード12曲をこもって練習し、コンサートでも一緒に弾き、同じソワレに出入りし、リストの信望者だったジョルジュ・サンドとショパンの出会いを作り。。。。とどれだけのことをしたか。
確かにリストとショパンはほどなく共に過ごすこともなくなったけれども、それはリストの演奏活動人生による理由もあったし、またショパンはリストの政治力に嫌気がさしてきたことも確かであっても、それでもリストに対しての畏敬の念は持ち続けていたのです。
そのリストがショパンの死後10年を経て、ショパンの回想録を執筆してもなんの不思議はありません。
最後はリストの言葉でまとめました。
『なんという心優しい憂鬱が、繊細な感覚が、叡智が、美しく開花したことか!
今どれだけ名声を得ていようとも、後世の人々は、はるかに高い地位をショパンに与えるはずである。
目を見張るほどに大胆で、華やかで、魅惑的であるゆえに、奥深い性格は優雅な装飾の襞に隠され、叡智も美しい外見に隠れているが、我々は作品の真価を見つめなくてはならない。』
そして10月に音楽之友社より発売が決まった、大西直樹先生との共訳、アダム・ザモイスキ著「ショパン」の伝記の大宣伝も最後に入れました!
もうアマゾンには予約販売で出ていると聞きました←確認していないのですが。
千葉市文化振興財団とアートホールのスタッフの皆様には、大変にきめ細やかな対応を頂きました。心から御礼を申し上げます。
この写真を見て、「えっ!?私ってこんなにチビ?? 腕の太さもどうってことないかも」と思ってしまったのでした(笑)
私の左隣の青田さんは確かに巨漢でいらっしゃいます。右隣の花澤さんは、もう15年くらい前に若葉文化ホールで同様の催しをした時にもお世話になりました。
あの時は花澤さんがアシストして映像を送る係をして下さったのでした。ものすごく大きな映像を映し出すスクリーンの代わりになる装置も大工仕事で作成下さいましたっけ。
時を経て、今は自分のiPadで作成した映像を、自分で操作しながらレクチャーができるように進化しました!(会社員さんなど、そんなプレゼンなど朝飯前かしら。💢)
一つにはコロナ禍に入って、音楽家もこういったことが出来ないわけにいかなくなった事情も後押しになりました。どうにかKeynoteが使えるようになったのもメタクソ言われたことが後押しになり。。。とあちこちでプッシュして頂いたことに感謝です。
大宣伝!アダム・ザモイスキ著 大西直樹・楠原祥子共訳 『ショパン💓』
もうAmazonでは予約ができるそうです。皆様、よろしかったら私たちの力作をぜひお読みになって下さい。
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