審査員のダンタイ・ソンとリュビモフに聞く!
ピリオド楽器による第1回ショパン国際コンクール
第2次予選とファイナルの間の9月11日、KAJIMOTO音楽事務所の佐藤さんの取り計らいで、審査員のうちの二人、Dang Thai SonとAlexei Lubimovとの会合が企画され、出席させて頂きました。
ダン・タイ・ソンは言わずと知れた世界的なピアニスト、1980年のショパン国際コンクール優勝者です。
この回のコンクールは大荒れに荒れ、審査員同志、特にポーランド人審査員とその他の国の審査員の間、或いは審査員と主催の間でコンフリクトが激化し、アルゲリチ、ニキタ・マガロフなど数人の審査員は、途中で審査放棄をして帰ってしまったのでした。
いわゆる『ポゴレリチ事件』、革新と伝統の対立の年でした。
ショパン演奏の神髄はポーランドにありとする伝統、いえ、伝統を超えて“神話”を頑なに守るポーランド派と、美の観点は一つであるべきではないとする国外派。
ポゴレリチの演奏を、ショパン演奏の伝統からはずれると排除する主にポーランド人審査員グループと、革新的でその才能はずば抜けているとするグループが真っ向から対立する中で、初めてアジア人、しかもヴェトナム出身のダン・タイ・ソンが優勝したことは、その後のコンクールに大きな影響と変革をもたらしたと思われます。
アレクセイ・リュビモフはモダンピアノと古楽器と両方の優れたピアノ奏者で、そのレパートリーはバッハからジョン・ケイジに至るまで、それぞれのエポックにふさわしい解釈が高い評価を得ています。
大ネイガウスの門下ですから、私にとってはそのことがもう神々しいばかりです。
さて、この神々しい、しかし少しもそれを外に感じさせないとオジサンとおじいちゃまとの会合は、ホテルヴィクトリアでのラウンジで!
話はコンクールについての講評や個人的な意見、ショパンの楽譜、奏法まで話が及び、和やかな中、核心をつくことも飛び出しました。
私たちの側で事前に質問をまとめ、お二人にお答え頂きながら進めていきました。
・即興的なヴァリアント
・プレリューディング
・低音とメロディのずらし奏法
・暗譜
・ディナミーク
・ペダリング
いづみこさんと加藤先生が整理して下さった質問の内容は、おしなべてピリオド楽器の奏法についての疑問を網羅したものです。
芸術のことでもあり、ピリオド楽器の初回コンクールという事情もあり、ここから先は黒、ここまでは白と線引きしたお答えが返ってきたわけではないが、お二人それぞれの感覚を十分に理解できるお答えを頂きました。
質問の本流から少し逸れつつ、コンクールとポリティック、それぞれのフェイヴァリットのことなど、人間味漂うオハナシも少しだけ。。。!
相変わらず夏の続きのような陽射しのワルシャワ。オペラ劇場をのぞむホテルヴィクトリアで。
お二人の巨匠のお話は追って原稿にまとめていこうと思います。
楠原祥子
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