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私のライフワークとしてきたショパン・マズルカ全曲録音に着手しました。

まずは前半、作品6、7、17、24、30、33、41までの29曲。収録が完了しました!

FaceBookに投稿したら、本当にたくさんの皆さんから激励のコメントを頂いて、嬉しいも嬉しいながらまた一段と緊張です。ポーランドの調律師さんから、「ポーランドでもマズルカ全曲録音は滅多にないことだ。」とコメントを頂きました。

そんな中、日本在住のイギリス人ピアニスト、ロナン・マギルが「Dear Shoko,私もまもなくイギリスでマズルカ全曲録音するよ!!」えぇぇッ、それはびっくり、偶然中の偶然!!6月29日にはコンサートで弾くそうなので聴きに行こうと思います。

CD録音は結構ハードです。必ずしも暗譜する必要はなく、また1回で録らなくても何度か弾けるという点では、一発勝負のコンサートより気楽なように感じられるでしょうが、これがどうして、それは考え甘いのです。

コンサートならば、それまで練習を重ねて、それでも、尚且つ本番で何かしら起こってしまったら、もうそれはそれ。。。。と腹をくくる。

録音はといえば、、、、良いものが録れるまでやる。くくく〜。これはかなり苦しいものがあります。

第1日目。作品6、7、17 と19曲収録。作品6と7は初期のマズルカで、民俗舞踏の要素が強く、いわゆるポーランドの民俗舞踏としてのマズルカをどう出すか。リズムのキレや特徴がポイントでもあるし、テンポの変化の指示はないけれども、『マズール』『クラヴィアク』『オベレク』これら3種類のマズルカ原種の舞踏が組み合わさって作られているので、踊りの変化にテンポを合わせて自在に変化させていきます。

即興的な創作。。。といってももちろん大筋準備しておくのですが、それが楽しみでもあり、匙加減次第では妙なことにもなるわけです。

作品6−5ハ長調(エキエル版。パデレフスキ版では作品7-5)。これ困ったマズルカです!たった1ページしかなくて、低いオクターブのソの音で、ブンブンブン・・・と威勢よく始まります。

その一番下に「Dal segno senza Fine セーニョ記号に戻って終わりなしに」と書かれています。

終わりなしに‼️ そんなこと言ったってどこかで終わらなきゃ。

ではどうしましょ。というのが弾き手に与えられた課題です。

実際のマズルカの踊りでは、特にテンポがとても速い『オベレク』では、興が乗ると🌀🌀🌀ぐるぐるぐるぐる激しく旋回を繰り返して、そのうち輪が千切れて終わったり、倒れ込んで終わるということもあるらしい。例えば作品33−3のマズルカも、それを描写しているのだろうと思わせる終わり方です。

この曲のさらなる難題は、ダンスの始まりにmezza voceとても弱く、.4段目にはsotto voce微かな音で、と指示があることです。それでも結構強烈なアクセントは入れなければ。

楽しそうに賑やかにオベレクを踊っているのを、もしかすると遠くの方から眺めているのかもしれません。

色々なピアニストの録音を聴くと、2回リピートして終わりとか、3回リピートして自然にフェイドアウトしていたり、機械的にボリュームを下げて消えたり。

我が師バルバラ・ヘッセ・ブコフスカは、天才的な閃きで、こう解釈したのでした。「村の一本道を結婚式の行列がやってきて、自分の前を通り過ぎて教会へ向かって遠ざかって行く」というアイデア。

そして実際録音においては、見事なドップラー効果を聴かせて下さっています。救急車のサイレンの如く、自分の前を通り過ぎるときに最大音量になって、その後どんどん弱まる。。。!

でもちょっと問題は、それを実現するにはショパンの強弱の指示を無視しないといけないし、最後は序奏を繰り返して終わるので、それもショパンの指示を乗り越える大英断が必要です。

今回の録音では、私も迷わずブコフスカ先生案でいきました!

作品17、24、30、33、41と4曲ずつセットは、どれも若い颯爽としたショパンの心意気も感じられる反面、切ないまでのノスタルジーや胸の内の哀しみが陰影を挿しています。

作品41−1(エキエル版。パデレフスキ版では41-2)は、マヨルカのマズルカといわれ、ショパンとジョルジュ・サンドの関係が始まってパリからマヨルカ島へ渡った時の記念すべきマズルカ。

ショパンの作曲人生はそれからだったとも言えるし、ターニング・ポイントだったことは確かです。

第2日目は、1日目の疲れが出て朝起きるのもやっとでした。作品24、30まで終わり、33に入ってから3曲目でもう手も頭も消耗し、33の3、4は翌日に持ち越しました。

そして第3日目。なぜか気分も体力も復活して、作品33の残り2曲と作品41の4曲を録音して無事終了!

残る後半と遺作のマズルカ群は10月に録音します。

後半の作品50、56、59と3曲ずつ。これらはおそらく最難関です。舞踏の色合いはやや薄れ、ポリフォニーのそれぞれの声が最終的に束ねられて悲痛な叫びをあげたり、声部がややこしく絡まる曲もあるし、英雄的な断片が顔を出す曲もあるし、またこれから準備していこうと思います!

お世話になった調律の足立脩さん。足立さんの調律はホント、神業です‼️

それにいいこと聞きました!足立さんの貫いていらっしゃる信念は、スケジュールは何があっても先着順を守る。絶対一度入れた予定は動かさない。

じゃ、例えばですよ、名もしれないピアノの先生の発表会の調律の予定日に、アルゲリッチの調律のオファーが入ったらアルゲリッチを断るの? と意地悪く聞くと、事もなげに、「えぇそうですよ。発表会の調律に行きます。とにかく先に入った予定を順守するまでです」

足立さん、すごいなぁ、信頼できる!

そして今回ディレクターとしてお世話になったオクタヴィアレコードの三谷さん。社長の江崎さんが全幅の信頼を置いています。とにかくよく知っているし、モノをはっきり言う!ダメ押しも臆せず出す。いいものを作るための叱咤激励でしょうね。三谷さん自身もショパン国際コンクールを受けに行ったことがあるというショパンのエキスパートです。

一発でよく弾けたと私は思っても、「細かく聴くとそうでもないところもあるもんで、テイクが一つではこわいです」。いやダァ、消耗させる気?などと呟いてみるけど、これまたいいものを作るための三谷さんの熱意ですものね。

作品41まで録音完了‼️ オクタヴィアレコードの皆様、足立さん、おかげさまでお世話になって本当にありがとうございます。

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