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ポーランド国立ショパン研究所所長のアルトゥル・シュクレネル博士 doc.Artur Szklenerの講演が東京音大TCMホールで開催され、通訳を務めました。

『ショパンを解釈する ー一つの親密な情景ー』というタイトルです。

題名など言葉の介助なく、ショパンの音だけによる絶対音楽に、形式や楽想の特徴から解釈して叙述性を引き出す試み、が内容です。

作品55の2曲のノクターンを、2曲で全体をなすとして、オペラに例えるなら、55−1はレチタティヴォで叙述し、55−2は愛の二重唱アリアでそれを完成させているというシュクレネル氏の解釈。とても斬新でした!

シュクレネル氏が若くして重積を担い、所長を務めることになった理由を少し垣間見たように思いました。

シュクレネル氏はテキストに沿って読み進めていくだけでなく、間に自分の言葉も入れて、講演を進めていきます。私がそれに対応していくので安心していたご様子でした。内容でももちろんそれが分かりますが、何より、目線がPCから客席に向くし、自分の言葉で語るので説得力も大幅にアップです。

この原稿が届いたのは4日前の6日(日)の夜のことでしたから、それから4日間はとにかく非常事態宣言!!他のことはすべて放り、寝る時間も削って翻訳に時間をかけました。

シュクレネル氏の講演の通訳は数年前にしたことがあるのですが、その時は関口時正先生が事前にほとんど翻訳して下さって、私は確認して読む役目でしたが、今回は私一人の力で翻訳をしなければならず、当然私のポーランド語の語学力を超える内容でしたから大変でした。

幸い、今回は譜例も多く含まれており、その譜例に即した内容でしたから、私が桐朋で行っているショパン作品の解釈の講義に類似した内容もあって、そのような部分はそれほど頭を抱え込まなくて済みました。

いえ、正直なところ、頭を抱え込んでいる時間の猶予などなく、素訳をどんどん進めていかないと間に合いませんでした。そして推敲は1度のみ。2度目は当日ステージで訳しながら言葉を整理していく。

シュクレネル氏はさかんに私に謝って下さいましたが、多忙な方であることはわかっていますので致し方ありません。

当日の朝、私が訳文をプリントアウトしたところ、譜例も含みますが28ページありました!通訳が入ると倍の時間がかかりますから、果たしてこの分量が時間内に収まるだろうかと心配になりました。

推測通り、3分の2ほど進んだところで時間いっぱいになってしまい、続きは次回にとなりました。

さてシュクレネル氏が強く勧める作品55の録音について、まず55−1はクラウディオ・アラウ。55−2はイグナーツ・フリードマンの演奏。

事前に聴かせて頂いたところ、フリードマンの55−2は驚くべき演奏です!左手の幅広いアルペジオ音形が、あたかもダンスに誘うがごときです。右手の『愛の二重唱』は二つの声がクリアで、3声の見事なポリフォニーを生み出しています。重々しい、真摯な、シリアスな曲というイメージをこれまで持っていて、とっつきにくいと感じていたのですが、これはもしかすると、そんなことはないのかもしれません。解釈によっては・・・

とにかく本当に大変だった原稿が届いてからの4日間でしたが、カワイの谷本さんと3人での打ち上げは最高のひとときでした!中目黒のウオツネで。

素晴らしく美味しいマグロなどのお刺身の後、谷本さんが次々とカキフライ、アジフライ、穴子の天ぷらと注文して下さって、どれも美味しくて、シュクレネル氏もご満足な様子でした。

とにかく谷本さんがこんなにショパンコンクールや世界のアーチストやショパンに詳しいとはびっくりでしたし、英語の語学力もあるし、楽しい方とは初めて知りました。

その上、シュクレネル氏がこんなによく喋る人とは、これまた初めて知りました。ドライブがとにかく好きで、10時間程度の運転は軽くこなすので、クラクフからヴェニスまですぐだそうです!車種はレクサスES。なんと私が欲しいと思っているISの一回り大きい型ではありませんか。

日本ショパン協会事務局長の小宮山さんには、今回とてもお世話になりました。また東京音大でこの講座の担当をされているのは稲田潤子先生。お二人とはもう長く存じ上げています。

桐朋学園の宗次ホールを上回るキャパシティを持つ、この東京音大のホールは立派ですね。

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