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3月5日(金)にカワイ千葉で行ったショパンOnline Zoomセミナーの一連の仕事がようやく完了しました!

『最初に弾くショパンの曲 〜ショパンを子供に教えるなら 初級』

Zoomのライブセミナーから、アーカイブ収録、Vimeoにアップと限定公開まで。ずいぶん長くかかったわね。。。と思われるでしょう? 何もかも初めてのことばかりだったので、本当に長い道のりをかけてやっとです。

内容は、桐朋で行っている講義とエキエル版バラードの日本語版翻訳でショパンの楽譜の成り立ちを学び、それらを再構成しました。

作品で取り上げたのは有名どころの。。。

子犬のワルツ、ノクターン第2番、7歳と11歳で作曲したポロネーズ、マズルカ3曲、レント・コングラン・エスプレッシオーネ、3つのエコセーズ、コントルダンス 全10曲。

ショパンが弟子のレッスン譜に書き込んだ指使いをお見せしながら弾くなど、2画面構成の進行にも初挑戦でした。

全体を4部の構成にしてポロネーズではじめました。

ショパンは7歳にしてすでにピアノを美しく響かせる音域や、豊かな響きを作り出す和音の配置、ダンスの作法やレディファーストの会話術、人の心の表裏を平行調関係で長調と短調で整理して表現することに至るまで知っていたことに、私はただただ驚き、天才とはそういうものなのだと、凡人との違いを感じたのでした。

まだ7歳、まだ小学校1年生かそこいらの年齢にしてピアノという楽器を自分のものにして、ポロネーズに盛り込めていたとは。楽譜も書けなかったので、父親が書いてワルシャワの出版社に持ち込んで出版された曲です。

4年後の11歳で作曲したポロネーズも構成はほぼ同じですが、装飾音が豊かになり、ショパンのブリリアントスタイルの幕開けと言える曲に仕上がっています。

第2部はマズルカ。作品7−1の有名な「Bam Bum Bum(ショパンの姉による)」が曲の3分の1を占める曲です。

ショパンがお弟子さんのレッスンで楽譜の空欄に書き込んだ「ヴァリアント(異稿)」もお見せしました。

このヴァリアントからはショパンと弟子の人間関係が透けて見えます。

作品7−1のヴァリアントは、ジェーン・スターリングというスコットランド出身の富裕な女性のレッスン譜に書き込まれていて、このヴァリアントはごく簡単に弾けるのに、洗練された遊びがそのフレーズに生まれるのです。

私もこの曲ではリピート後はこのヴァリアントを弾きます。

ショパンはジェーン・スターリングとレッスンを重ねるうちに、彼女のピアノのレベルはもちろんのこと、人となりや性格も知っていくうちに、この変奏が彼女には合っているな、と思って書き込んだのでしょう。

出版社に送るための最終の清書譜には、このヴァリアントは当然なかったわけです。その後のレッスンのリラックスした雰囲気の中で、ショパンの心にちょっとしたモティーフが浮かんだ。。。それがヴァリアント。

そこにショパンのセンスのよい即興や、変奏の手法を垣間見ることができるのはなんとも嬉しい。時空を超えて、ショパンのレッスン室を覗いていることになるから。

マズルカの中には、これまた素敵な曲があるのです。マリア・シマノフスカという19世紀初頭のポーランド人女流ピアニストの音楽帳に、ショパンがサイン入り清書をして書き込んだ曲があります。

土着の農民色はまったくない、エレガントで優雅なマズルカです。きっとシマノフスカへの敬愛の念を込めて作曲したのでしょう。

少し不思議なのは作曲年。シマノフスカは1831年没。でもこの曲は1834年の作で、シマノフスカの死後にアルバムに書かれているのは不思議でもあります。

推測ですが、シマノフスカの娘はポーランドの国民的詩人であるミツキエヴィチの妻になり、パリでミツキエヴィチと交流があったショパンが、娘を通じてシマノフスカへのオマージュとして書いたのではないかと思います。

もうかなり滲んでしまっているこの手書きの楽譜もお見せしながら弾きました。(写真はないのが残念。弾いてる私は必死で写真どころではない!)

第3部はペダルを使ったショパンの音響の世界。ノクターン第2番の登場です。

そして最後は子犬のワルツ。早いパッセージにきらめきを与える小さなフリル状の装飾音の指使いについて、またまたショパンのレッスン譜を参考にして解説しました。

ショパンはピアノ技法のほぼすべてを網羅した24曲のエチュードと、24の調性すべてに見合った音響の24の前奏曲を作曲しています。技法と音響は彼にとって同時進行だということですね。

今回取り上げたのは小曲ばかり。そんな小曲にもショパンの技法と音響は十分に発揮されていて、それを知ってその響きを追求する指導が必要です。

iPadのKeynoteで作成したスライドをお見せしながら、ローランドのスイッチャーを操作して画面構成の切り替えをしつつのセミナー。

私にとってはまったくの初挑戦の形式でした。

それだけに。。。。

雨あられと降り注いでくるトラブルや予期せぬ出来事に、心は折れそうになりながらも、一つ一つをスタッフと解決して進めていきました。

多くの方にご視聴いただき嬉しかったです。

そしてアーカイブ録画を公開するために、ライブの録画ではスタッフが写り込んでいてとてもアーカイブには出せないと判断して再録。ここからがまた大変だったのですが、それはもう語らず、次回に活かすことにしましょう。

そしてVimeoに限定公開でアップ。これは案外すんなり。学校で教務課のヘルプを横目に見ていたからかもしれません。

すべてが未知のことへの挑戦で、途中で心が折れかけてはまた頭をもたげて前進、の繰り返しでしたけれど、お力添えのおかげさまで完了できたことを嬉しく思っています。

カワイ千葉、チームを組んで下さった吉岡先生、その他手ほどきをして下さった方や千葉のグループの先生方の応援にも心からの感謝です!

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