桐榮哲也ピアノコンチェルトを弾く!in ルーマニア
皆さんこんにちは。桐榮哲也(とうえいてつや)と申します。
私2014年11月にルーマニアのサツマーレという街で、ルーマニア国立ディヌリパッティ交響楽団と、ベートーベンのピアノ協奏曲第5番『皇帝』を弾いて参りました。
指揮者はルーマニアの大統領より文化功績勲章と上級騎士勲爵士(Comandor)の称号を授与されている日本人指揮者の尾崎晋也先生で、今回は2012年にラフマニノフの第2番を共演して以来2度目の共演となりました。尾崎先生おもしろい本出しています。
前回の2012年はシベリウスの交響曲1番とラフマニノフの2番の協奏曲というプログラムだったためピアニストは自分一人でしたが、今回は「ピアノコンチェルトの夕べ」ということで一晩オールコンチェルトプログラム。という訳でピアニストの藤井恵さんが前半にショパンのピアノ協奏曲第1番を弾き、自分が後半に「皇帝」を弾くことになりました。
サツマーレという街は隣国ハンガリーとの国境に位置しており、ハンガリーの首都ブダペストから行っても、ルーマニアの首都ブカレストから行っても同じくらいの距離ということで、飛行機の乗り継ぎの良さの関係もあって我々はハンガリーのブダペスト空港からサツマーレに向かいました。
リハーサルは本番の1日前、本番の前日、本番の午前中の計3回。
リハーサルの前日(本番の3日前)は、指揮者と一対一でテンポや、不安な箇所の合図の確認等。軽い打ち合わせをしてホールで練習などしてリハーサルに備えました。
さていよいよリハーサル初日。私緊張しすぎて、暴走致しました。
暗譜の不安から来る緊張、普段聞き慣れないオーケストラの生音に翻弄されたり等、色々要因はあったと思いますが全然オーケストラを聴かないでシャットアウトして完全に自分の世界で弾きまくってしまったのです。
余裕の無い自分は自分の音楽に没頭して、指揮者が自分の演奏にオーケストラを合わせてくれるだろうと勝手に思ったんです。。。。
おそらくオーケストラも困っていたことでしょう。そのリハーサル終了後、私は反省しました。
録音聴いてさらに反省しました。一人で練習していた時に、オーケストラの音のイメージトレーニングが出来てなかったことに気がつき、そこからはひたすらスコアをにらみオーケストラの音を思い浮かべてイメージトレーニングに励みました。
次の日は、とにかく自分の音とオーケストラを「聴く!!!」ことに全神経を集中してリハーサルに臨みました。
勿論自分の音楽をすることも忘れずに。 始めはやはり緊張していましたが、徐々に空間で調和された自分+オーケストラの音が聞こえてくるようになり、自然と緊張も和らぎ音楽そのものを楽しめる感じになっていったのです。
そのリハーサル後、指揮者の尾崎さんからは「昨日とは別人28号」という意味不明な称号を与えられ、前日には無かった小さな手応えを感じたのでした。
そこからはまだまだ気を緩めずに、そして次の日の朝に最終リハーサルをして、無事その日の夜に本番を終えたのでした。
前半で藤井さんが素晴らしい演奏をしてくれたこともあり、会場は暖かい雰囲気で包まれていてオーディエンスはとても優しく何度もカーテンコールになり、アンコールまで弾かせて頂きました。
実は自分は前回ラフマニノフを弾いた時、アンコールを用意しておらずプロとして失格だと悔やんだので、今回こそはと用意していたのでした。
ベートーベンの「皇帝」は、オーケストラとピアノが常に密接に一緒に音楽をしていて、まるでピアノが一つの役割を持ったオーケストラの一つの楽器であるかのように感じました。
そういうところから「ピアノ協奏曲は大きな室内楽」と言われることがあるのだと思います。
それでもってコンチェルトの場合は、ピアニストはオーケストラの全ての楽器の人達との掛け合いを把握して、さらには自分のパートをも暗譜して演奏しなければなりません。
そうなってくるとピアニストは自らが「指揮者」でもあるくらいの深い理解が必要です。そのくらいであって初めてこの曲の魅力を出せるのだと思います。
きっと弾きぶりできるようになるくらいの、そうブッフビンダーくらいにならないといけないのですね!
桐榮哲也
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